●NO.5「静岡県新酒鑑評会で想う」 2004年4月9日

 毎年3月に静岡県の新酒鑑評会の一般公開が開かれ、出品酒を試飲できます。最高の技術のお酒を一同に利き酒できる、こんなチャンスは滅多にない、優れものの会でもあります。静岡県は清酒としては、ずっとマイナーの県でした。昭和の終わり頃に、静岡酵母から醸し出されるフルーティーなお酒で、全国の新酒鑑評会で一世風靡したことがあります。他県が皆、協会酵母を使う中で、静岡は独自の酵母を使っていましたから、鑑評会でも目立っていました。

 その後は各県の酵母開発競争が繰り広げられ、香りのすごく高いお酒を造る酵母も出てきました。鑑評会で勝には目立たなければいけないようで、今までの静岡型のお酒はいい評価をされにくくなっています。

 変な言い方をしますが、静岡型をイソアミル系と呼び、香りのすごく派手なタイプをカプロン酸系と呼んでいます。人間の鼻は、同じ量のイソアミルとカプロン酸があった場合には、カプロン酸の方が強く感じます。ですので、カプロン酸系のお酒の方が、鑑評会では勝ちやすいとなるわけです。

 鑑評会はあくまで、争うことにより、技術の向上を目的としています。実はカプロン酸系の芳香物質とイソアミル系の芳香物質を比べた場合、格段にカプロン酸系の香りを出すのが簡単です。香りを出すだけなら、技術云々なんて必要ないくらいです。

 そういうこともあって静岡県の鑑評会では、イソアミル系のお酒を奨励していますし、そうでなければ、入賞できないようになっています。

 世の中、カプロン酸系のお酒が多い中、イソアミル系の静岡酒もみなさんに飲んでほしいなあと思います。

 

 と、ここまでは優しい話であり、静岡では普通の話し。

 実は静岡の蔵元さんも酒屋さんも、この業界の人(私も入れて)は、上の香りの成分の話しを大きくとらえ過ぎています。他県の業界関係者の中には、まだそんな話しをして盛り上がっているの? と香りの成分の討論は終わっている節もあります。

 私は、清酒というのは、味だと思います。味で評価する。香りも味の内でしょう。味の中で香りは非常に高いウェートを占めていると思います。

 静岡県の鑑評会では、カプロン酸系のお酒は勝たせません。対象外って気もします。それはそれでいいかも知れませんが、静岡県新酒鑑評会で並んでいたお酒の中には、カプロン酸系の香りでも、すばらしい味わいのものもありました。そのお酒は見殺しにしていいのか?私にはよくわかりませんが、

 まだ何かが欠けている。

 まだまだ宿題がありそうだ。  =  成長していくのでしょう。

 香りはファッションで味はスタイル。

 大事なのはどちらでしょうか。


コラム 丸河屋