日本酒の楽しみ方 SBS学苑パルシェ 第13期

 ●SBS学苑パルシェ校 日本酒講座 「日本酒の楽しみ方」第13期内容 2008/10〜2009/3

日時

講議内容

使用酒

10月21日

「蔵元ゲスト」

静岡市駿河区にあります萩錦さんが登場。

11月18日

「お酒のラベル表示」

特定名称、生、原酒などを理解します。

12月16日

「醸造酒」

日本酒、ワイン(ボージョレーヌーボー)、ビールを食べ物を通して比べます。

1月20日

「しぼりたて」

新酒を理解します。

2月17日

「みりん・白酒・甘酒・にごり酒」

清酒ではない日本の伝統酒を理解します。

3月11日

静岡のお酒」

地元の静岡のお酒を理解します。

お申し込み・お問い合わせはSBS学苑パルシェ 電話 054-253-1221

10月21日(火) 「蔵元ゲスト」萩錦さん登場。

 第13期の開講を迎えました。私にとっては7年目に入りました。まるで小学校を卒業し、中学に入学したところであります。講師業としてはこれから先長く、自分自身も勉強しなければと自負しております。さてさて、先日の復習とまいりましょう。

日本酒講座

 カルチャーセンターとしての日本酒講座は何をすべきか。その目的や内容については教室でも説明させてもらいました。それは私からの立場での考えていることです。受講者としての目的は各々で違ってくるのではと思います。しかし共通した気持ちは持っているはず。”お酒が好きだ”ですよね。その延長として、根本的に日本酒を学びたいとか、同じような気持ちの方と接したいとかがあるのではと思います。講座で知り合った方と蔵元のイベントに出かけたり、試飲会やお酒のお祭りに繰り出すのも楽しいものです。

 お酒は日本酒に限らず、人と人が近づきますね。男女ならさらに良し。このようなノリもあってもいいのかなあと思ったりしてます。

ゲスト登場

 開講日にいきなりゲストは講座的にはしずらいものもありましたが、酒造会社は11月からは酒造期間に入り、教室にお越しいただくための時間を取ってもらうことも難しいようです。

 仕込み具合や、天候にも左右されるのでしょう。先のことについては不確定な要素が多そうです。

 したがいまして、ゲストの萩錦酒造の萩原様には今回の御登場となりました。萩原様には無理をお願いし、翌日の日本酒の極め方にもお越しいただきました。SBS学苑の今講座に対しての御好意、ありがたいものです。

 今回のテーマは「酒は人なり」でした。萩原さんと接して、萩原さんの人柄を理解し、萩錦のお酒を1本づつ確かめていく。お酒を蔵元さんといっしょに味わうことにより、「この人にこの酒あり」と理解できたと思います。お酒の中に含まれている、これまでのストーリーとこれからの夢やロマンが萩原さんを通してわかったことでしょう。

 お酒だけ飲んでいますと、このお酒は美味しいとかの自分にとってはどうかという目線と他社の製品と比べる目線が中心となります。

 飲み手としては、お金を払って買って飲むのですから、どのように飲まれても構わないのですが、日本酒講座の受講者となると、普通の飲み手よりは一歩も二歩も日本酒への理解を深める努力をしてもらいたいです。

 お酒を学ぶ人のことを”酒徒”(しゅと)と呼びますからおぼえて下さい。

萩錦のお酒

1. 蔵出し原酒 本醸造
2. 南アルプス 特別本醸造
3. 登呂の里 特別純米
4. 安倍川の恵み 特別本醸造
5. 安倍川の恵み 純米
6. 駿河酔
7. 純米吟醸

 萩錦のお酒を7本お飲みいただきました。左の写真の左から仕込水、後は列記します。これらのお酒を1本づつ、萩原さんが説明してくれました。メモを取るようにテキストを作ってありましたから、再度御覧下さい。あなたが書かれた文字で、そのお酒の印象が蘇ってくると思いますが、いかがでしょう?

 質問もたくさん出ました。水のこと、米のことや保存管理についてもありました。水や米はお酒になくてはならないものですから、これから先も話題となることでしょう。触れていきます。そして、造り手以外は選ぶこともできないです。保存管理についてだけは、あなたにもきちんとしてもらいたいですから、もう一度ここでも説明しましょう。お酒の嫌いなものから遠ざけてあげればいいわけです。

保存管理

 お酒の特に嫌いなものは3つです。「光」「高温・温度変化」「空気」

「光」これが一番嫌いです。日光臭がついてしまいます。店内の蛍光灯でもこの香りはつきますので、瓶香(びんか)と呼ばれたりしてます。光が当たりますと、色も変わるのですぐわかります。黄ばんできます。匂いはキノコ系とオシッコ系が混ざった感じです。

 「温度」は熟成を早めます。温度と温度変化量が大きければ大きいほど熟成します。積載温度により歳をとるような感じです。飲み頃という観点からは熟成は必要です。しかし一般的に過度の熟成を必要としない商品を高温下に置きますと、老ね(ひね)ます。

 老ねますと老ね香(ひねか・ひねこう)がついてしまいます。老ね香は針葉樹の葉の匂いや椎茸を醤油で煮て冷ました感じもしますし、タンスの匂いや土蔵や土壁のような匂いもしたりします。一般的なお酒はきれいさがないと美味しく感じません。老ねは美味しさから逆に引っ張ってしまうことが多いのであります。

 「空気」は酸化させます。酸化されますと、飲みにくくなります。異物に侵されたような品質になります。酸化は開封しなければ起こりにくいです。開封したら、できるだけ早めに飲み切ることで防ぐことができます。ただし、若干酸化した方が美味しくなる場合もあります。この若干は数日のことです。1.8Lを開けたら、飲み切るまでに急いでも数日かかりますから、あえて酸化させる必要もないですよね。

 お酒の瓶にお酒が満タンに入っていません。お酒は火入れ殺菌されて瓶詰めされます。瓶に詰めて火入れ殺菌される場合もあります。この時に液体であるがために、お酒は膨張します。膨張しているときに、瓶の上まで液体がきます。そこで栓をして冷めれば、膨張もおさまり、数センチ下がり、空間ができます。

 栓がしっかりしていれば、真空なはずです。時々このような状態の時もあります。生酒は火入れ殺菌されていませんので、瓶の上の空間は、窒素の充填をしていない限り、空気が入っています。

 以上を総合しますと、お酒の保存管理は、
「新聞紙に包むか、箱に入れて、冷蔵庫の奥に立てたまま入れておく。」となります。

 追記します。横にすると王冠に液体が触れます。ここはカビがつきやすいです。冷蔵庫の奥は温度変化がすくないところだからです。ちょっと理屈っぽくなりましたが、御家庭でも参考にしていただければと思います。

11月18日(火) お酒のラベル表示

 保存管理の重要性

 前回に保存管理の悪い条件下におかれたお酒はどのような味になるのか?という御質問をいただいておりました。私のパソコンのディスプレイの影に隠れて置かれ続けていた1本のサンプル酒がありましたので、これが適した教材かと思いお持ちしました。(下写真の一番左)10年くらい放置されていました、かわいそうなお酒でありました。しかし日の目を見ることができました。

 長期間に渡って熟成させる長期熟成酒が製品としてありますが、これは光に当てず、目的とする温度で熟成させるものです。私がお持ちしたのは、長期放置酒でありますから、市販の長期熟成酒とは違っています。長期熟成酒の香りを熟成香とすれば、長期放置酒の香りは日光臭が主体であり、それに老ね香〜熟成香がしているものもであります。

 光にあたったために生ずる匂いを 日光臭と呼びますので、室内の蛍光灯の光を浴びてしまったお酒の匂いも日光臭となります。売り場に置かれたお酒が長期間売れないと日光臭がつきます。しかしこの欠点を隠すがごとく、業界では今でも瓶香(びんか)と呼んでいます。実際のところ、日光臭を知らない業界の方も多く、困った点でもあります。日光臭がついたお酒の香りは、みなさんが嗅いだように、異臭的であります。

 ・カビ臭い・・・タンス、土壁、キノコ
 ・オシッコ臭い・・・狸、稲の開花臭

 このように書きますと、相当良くないものと思われますが、もしかしたら使い道があるかもしれません。癖者は生かせばこれ以上のない優れ者となる可能性がありますね。

 特定名称

 お酒のラベルに書いてある、本醸造とか吟醸という文字が特定名称であります。その特定名称の書かれている意味は? 醸造アルコールの添加の有無と精米歩合の違いが大きな柱ということを学びました。

 つまり製造上において2タイプあることになります。1つは醸造アルコールを入れているもの、もう1つは入れていないものです。前者が本醸系であり、後者が純米系であります。

 今回お持ちした6本を3本づつ、本醸系と純米系に分けて、飲み比べてもらいました。私の方で一方的にしゃべってしまいましたが、次のことが言えます。

 6本のお酒の中には、フルーティーな香りのするものもあったかと思います。本醸系と純米系にとらわれることなく、華やかな香りがするものがあり、この香りを吟醸香と呼びます。吟醸酒は吟醸香がしても当たり前ですが、本醸造でも純米でも吟醸香のするものもあります。

 こうなりますと、本醸系と純米系にリンクする吟醸系があることになります。本醸造や純米酒にもあって、本来は吟醸とか純米吟醸とかの表示がされてもおかしくないものですね。

 どのような特定名称を付けるかは、蔵元の判断にもよります。大吟醸を本醸造と表示しても問題はありません。逆に、精米歩合から本醸造とすべきものを大吟醸とは書けないのであります。下れるが、上れないわけです。

 

 本醸造と純米酒の違いはわかりにくいです。

 もろみを搾る前に醸造アルコールを添加するのが本醸系なのですが、この時にたった1滴のアルコールを加えたとしても、純米の表示はできなくなります。そのような少量を入れただけの本醸造は実際には見当たりません。造り手も本醸造と名乗るからには、本醸造らしいものを造りたいことでしょう。

 となると、どこで違いを見分けるか?

 一番特徴が出るのがスッキリ度です。アルコール添加しますと軽快になり、スッキリした辛口になります。余韻にドライ感があります。

 アルコール添加しない純米酒はコクがあり、濃いです。それはアルコール添加されたお酒よりも旨味と甘味が多いからです。余韻は少々ざらついた甘味が舌の上に残ります。

 世間では醸造アルコールを添加物として悪者扱いする傾向がありますが、お酒のタイプとして考えた方が前向きで幸せがやって来そうです。

 これは私の意見ですが、味覚は濃いものに慣れますと、薄いものに対して鈍くなります。ですから、純米ばかりを飲んでいますと、本醸系に対してわかりにくくなってしまうような気がします。本醸系を飲んでいれば、純米の濃さがよりわかると思うのですが、いかがでしょうか。

 あなたは薄味派、それとも濃い味派?

 今回のおつまみはお刺身にしました。伊万里のお皿がにぎやかです。お醤油といっしょに柿酢を御用意しました。お酢にくぐらせてから、お醤油をつける食べ方もあります。お酢は締めますから、触感として硬くなります。これは酸類(H)のせいです。レモンも試してみるのも面白いですよ。

12月16日(火) 醸造酒

 きき酒の中のきき当て

 きき酒と聞きますと、銘柄を当てることですか?と聞かれることが多いです。確かに自分の贔屓の銘柄はわかることでしょう。蔵元が自分のお酒のことはよくわかると言うことと似ています。しかしお酒は刻々と変化しているものです。蔵元の気持ちの変化にも、長い目でみればお酒に現れてきます。また、仕込んでいるタンク1本1本は、同じレシピでも、出来てくるお酒は違いがあります。

 ワインのようにその土地や作り手の味(風土・文化)がいつも反映されているならば、グラスの中の液体から、どこの畑かは読み取れます。しかし、日本酒は原料であるお米は買い付けるわけです。蔵元で直接稲作をしているところもありますが、すべてをまかない切れません。したがいまして、日本酒のきき酒は銘柄当てにとどまることではありません。各々の立場により、きき酒の意味合いが違ってきます。

 本来からすれば、きき酒は酒質評価でありましょう。客観的に長所と短所を見つけて、そのお酒に秘められた部分にまでメスを入れます。そうすることにより、水質・原料米(産地・栽培方法・品種・精米歩合)・酵母・洗米と浸積と蒸し具合・もろみの仕込みと管理具合・搾り方・火入れの仕方・貯蔵方法等を特定して、それぞれを評価していきます。評価はマイナス面を重要視します。プラス面は当たり前の如く目立たず、あまり評価の対象にはなりません。これらのことは消費される以前の段階のことであり、業界側のすべきことです。

 では、消費者にとってのきき酒とは何でしょうか?それはそのお酒が自分にとってはどうであろうか?ということがまず第一に来ます。この価格でこの味。それがどうか?そのためのきき酒でありますから、よくあるきき酒会は試飲会の延長線にあるものです。お酒は個人の嗜好にあわせて飲まれるべきでありますから、品定めのためのきき酒でよろしいかと思います。

 SBS学苑日本酒講座のきき酒となりますと、また違った意味合いになります。酒を飲み、その酒の心を理解する。心は感性に近いものであり、磨かれるものです。お酒に磨かれ輝く人生。これは大げさですが、講座に来られて、何か持っていってほしい。得るものがあってほしいなあと思います。業界関係者でもなく、単なる消費者でもない立場としてです。名前のないお酒に馴染む。普段は銘柄の書いてあるお酒をお飲みでしょう。そうではなくって、何だかわからないお酒を吟味してみる。そのためには、今回やってもらったようなきき当てが有効な手段であります。当たれば良いということではなくって、きちんと自分なりに1つ1つのお酒を確かめることができているのかが大事です。同じお酒を同じお酒でないと評価して場合は、御自身にずれがあるわけです。人間は機械ではありません。いつも同じことは出来ないです。しかし慣れれば、慣れる前の自分とは変化します。再現性を重視したトレーニングです。きき当てをすることにより、お酒に対しての真剣さが育つと思いますので、講座ではこの方法を使ってきました。みなさんの集まり具合の時間調整にもなります。

 お酒の講座です。和気藹々も大切ですが、真剣さも必要。きき酒の仕方も個人々違いがあります。集中している姿は素敵です。自転車だって、最初から乗れませんでした。きき当てもいっしょです。懲りずにちょっとした喜びを感じて下さい。

 今回は「仲間はずれは誰だ?」をやってもらいました。

 本題に入りましょう。醸造酒がテーマ。おつまみから理解するでしたね。

 今回お飲みいただきましたお酒はこちらでした。4本でありました。

1. 日本酒 果実の香りがある軽いタイプ
2. ボージョレーヌーボー 一般的普及酒
3. ボージョレーヌーボー 無農薬な濃い口
4. ビール 麦芽100%の日本の濃い口

 日本酒とビールはデンプン質から、ワインは果実から造られます。果実はそのまま酵母が食べれてアルコール発酵されますが、デンプン質は酵母が食べれませんので、糖化させる必要があります。デンプンの分子同士をちょん切るようにする。2糖類から単糖類であるブドウ糖に変えるのが糖化であります。日本酒は麹の酵素で米を糖化させ、ビールは麦芽の酵素で麦を糖化させます。米は蒸され、麦は茹でられますが、これはもともとのβデンプンをαデンプンにするためです。熱を加えることをα化と呼びます。こういうことについては、教室で長々とお話しましたから、テキストを御覧になって、復習しておいて下さい。

 

 お酒とお料理の相性診断

 教材である4本をおつまみとあわせました。今回用意されたおつまみの中から、で囲んである3つを選び、それを4本のお酒とあわせました。おつまみはすべて日本酒とワインとビールを意識して作られた、教材としてもありがたいものでした。感謝であります。

 相性診断結果

 日本酒からみていきましょう。いずれのおつまみに対しても×がありませんでした。日本酒は幅広く食材に対応することがわかります。全体を通してみても、他の酒類よりもの点数が圧倒しています。自己主張せずに、相手と協調することがうかがえます。

 ワイン1.は果実味豊かでフレッシュであります。果実らしい酸味が効いていて、赤ワインらしい渋味はあまり感じません。辛口ロゼワインに近いです。3つのおつまみ全てにおいて、イマイチの相性結果となりました。やはり刺激的な果実の酸味はあわせにくいことがうかがわれます。お酒よりは果実に近い存在であります。

 ワイン2.は1.と同様に果実味豊かでフレッシュですが、コクがあります。赤ワインらしいコクです。このコクがあることにより、果実的な刺激が和らぎます。3つのおつまみとの相性すべてにおいて、ワイン1よりも若干よくなっています。果実よりもワインらしさがおつまみとの相性を良くしてくれています。このワインは熟成を得ることにより、もっとおつまみとの相性がよくなるでしょう。熟成によって、果実味をもたらすリンゴ酸が旨味である乳酸へと変化します。乳酸はおつまみにも入っているので、共鳴するわけです。

 ビールも同じ温度で提供しました。いつもは冷えた状態で飲んでいますから、いつもとは感覚が違ったかもしれません。このくらいの温度の方が、味的にはよくわかります。清涼感のごまかしがききません。ビールはホップの爽やかな香りと、いぶした香ばしい麦の香りと、麦の旨味が若干のアルコールと大量の炭酸ガスにより、バランスがもたれています。おつまみとの相性をみる上では、香りと炭酸と水っぽさが影響してきます。今回のおつまみとの相性をみますと、ホップの香りとサラダがあったようです。麦らしい旨味と黒豆のデンプン質同士の共鳴もありました。似た物同士が出会った喜びですよ。ハンペンのように香ばしいおつまみとも相性はよいのですが、今回のビールのホップ由来の香りとはあわなかったのではないでしょうか。それはハンペンが冷えていたことと、ビールが冷たくなかったことに起因しています。ハンペンが熱くて、ビールが冷たければ、炭酸飲料の良さであるリセット効果が期待できました。

 

 これまでお酒とお料理の相性診断は何回もやってきました。その経験から私としては、相性研究そのものが理解されるかどうか心配でありました。相性は個人の嗜好とは違います。その人にとっては美味しい組合せが、必ずしも相性が良いとは言えません。美味しいとか旨いは幅が広すぎます。個人の好き嫌いに左右されています。何が美味しいとか、何を好むのは自由なわけです。この自由の中には、相性の悪さゆえに美味しいとか、好きとなることも多いです。

 相性は相性度と判定できるくらいの、絶対まではいかずとも、絶対的に近いほどの幅の狭さがあります。だから判定できるわけです。

 個人々は相性の良い組合せが美味しいこともあるし、相性の良くない組合せでも美味しいとなることもあります。

 人間は多面的です。いつも同じ組合せが美味しいと判断するとは限りません。

 だんだんわかっていくことです。言葉に惑わされないでください。また、神経質になりすぎても、講座本来の目的とは違ってきてしまいます。実際、私が神経質になってきます。どうしたら理解してもらえやすいかなあの渦に入り込んでいますから、どうかお許し下さい。

 これまで講座でもこういうことがありましたから、私自身も相性診断することに対して、もたもたした経緯がありました。

 例:焼酎が好きで日本酒が苦手な方は、どんなおつまみでも焼酎との相性は○をつけ、逆に日本酒との相性には△や×、あるいは何も書かないこともありました。どうしても好き嫌いが中心となって判断されてしまいます。

 どういうことに美味しさを感じるのかも違いますしね。

     相性 ≠ 嗜好

 しかし今期のみなさんは違いました。ズバッと悩まずに答えを出し、しかも的確でありました。私としてはほっとしたと同時に、今回の企画もやってよかったなあと自信がつきました。これもそれなりのお酒とおつまみがあったからでしょうね。

 私自身が考案してある2品もどこかで使えればと思っています。そして美味しいけれど相性は良くない組合せもお試しいただこうと思っています。

1月20日(火)  みりん・白酒・甘酒・にごり酒

 日本の伝統の醸造酒である日本酒。日本の伝統の蒸留酒である本格焼酎。日本の伝統の混成酒であるみりんなど。今回は混成酒であるみりんと白酒の勉強をしました。日本酒からすると道草だったかもしれませんが、日本の伝統酒ですものね。

 今回のテーマについては今期始まってからずっと気にしていました。2009年に入り、増々気になり始めていました。したがって、本来1月のテーマであった「しぼりたて」をも間違いした次第であります。予定と内容が変わってしまって、申し訳ございません。しぼりたてについては2月にさせていただきます。

 では本題に入ります。

 甘酒はそもそも甘い酒の総称であるべきたと思います。しかし現在甘酒は酒粕から造った甘酒か、麹から造った甘酒を指します。甘いお酒は甘口と表現され、甘酒はお酒を飲めない人でも飲める、お酒のような飲料となっています。甘酒についてはこれくらいにしておきましょうか。

 今回の白酒・みりんを理解してもらうために、13本もお持ちしました。(+1本ありましたね。)これほどお持ちしたのは、一度で理解してもらうことと、それだけ多くのタイプがあるからであります。

 多くのタイプからは日本の歴史や伝統を感じますし、これらを生み、今日まで成長させてきた人々の生活、特に食文化については、重々考えなければいけません。

 生まれてきたすべての物には心があります。物心を理解せずに、好き勝手に自分の尺度で計っているのは、これまでの伝統文化を否定することに成りかねません。

 実はその点について、最も心配していましたが、年越し苦労でありました。

 ある物だけを良い物とし、ある物以外は良くないとする。このようなことが講座では見られず、ほっとしました。みなさん物心(ものごころ)についてわかってくださっているようです。

 例えば自分とまったく口に合わないお酒があったとします。「いったい誰がこんなお酒を飲むのかなあ?」「このお酒は○○系だから、○○だ。」

 そのお酒は現存していて継続して製造販売されています。どこかで誰から美味しいと飲んでいるに違いありません。ですから、「どうすればこのお酒は美味しく楽しめるのかな?」の方向に行くべきであります。趣味をお酒としている人々の中には知識武装したスナッブが多いことも御承知下さい。

 教室でお飲みいただいたお酒について、復習としての説明をしていきます。

 

「みりん風調味料」

 みりん風と明記されていますから、みりんではないことは商品自体からわかります。この手の商品はどのような理由があって生まれたのでありましょうか?福泉が発売されたのは1947年とラベルに書かれています。昭和22年です。終戦後まもなくであります。当時の日本は敗戦で物資に乏しく、米も贅沢品でありました。食べる米すらないのですから、それから造る日本酒なども超贅沢品であったことでしょう。

 どうしても飲みたい人は失明覚悟でメチルアルコールを飲んだと聞いています。酒販店の中でも、売れればいいさとの悪行をしたお店はエチルアルコールを混ぜたり、そのまま売ったりして、失明させている例もたくさんありました。

 みりんはアルコールともち米と米麹から造られます。昭和22年にみりんを造ることができたでしょうか?米が足りない時代ですから、バッシングされるに違いありません。

 日本酒ですら、アルコールを添加して三倍に水で薄めて、糖分と酸味料を加える造り方が推奨されていました。三倍醸造はパック酒などに受け継がれています。

 みりんは料理に欠かせませんから、日本酒同様に庶民も欲しがったことでしょう。その場合は、もちろん三倍醸造の日本酒を見習った造り方となるはずです。
 しかも安価が絶対条件であります。
 あなただったらどうします?

 みりんは甘いお酒であります。料理に使う人も味見もしてもらえないくらい、中味はどうでもいいとされています。今も昔もそうでしょうねえ。甘くて料理に使えるお酒を造ればいい。それはみりんでなくともみりんに類似していればいい。

 焼酎を薄めて糖分を加えれば、甘くて安価なものはできます。しかし麹の成分がなくては、みりんとは程遠いものであります。米麹に手に入らず、焼酎に入れることはできないとなりますと、アルコール分はどうしても日本酒を使うことになります。三倍醸造よりももっと安価な日本酒。

 米ぬかを原料とし、醸造アルコールを添加して高アルコールな日本酒を造る。この時点でできるアルコールは20゜〜25゜です。

 アルコール1度未満は酒類とはみなされませんから、アルコール1度未満に薄めます。味がなくなりますから、糖分と塩分と酸味料ょ加えて甘いお酒風の液体を造ります。これがみりん風調味料の正体であります。

 アルコールを1度まで薄めずに8度前後のものもありますが、食塩を加えることで、酒類とみなされませんから、酒税がかからず、安価なものが出来上ります。

 時代背景を考慮すれば、これはこれで必要性が高かったと思うのは自然かと思います。

 創意工夫、物づくり日本の底力。私は自分で使うかどうかは別として、よくやったと誉めてもいいかと思います。酒徒としては勉強になるありがたい物があって(残って)よかったと思います。

 

「本みりん」

 本みりんは本物のみりんを意味していると思われがち、本造り、本醸造、本直しという具合に日本の飲料や調味料は「本」が付くものがたくさんあります。

 日本酒でも一度だけの火入れ(殺菌)の場合は生貯蔵とか生詰とかの名称を用います。

 おかしいものですよね。

 以前の国産ワインの規定では国産ワインが20%以上使用されていれば、国産ワインと表示できました。これもおかしいですよね。ウィスキーもウィスキーに類似するものでよしとなっていました。ビールも麦芽とホップから造られますが、日本は麦芽を2/3以上使っていればよしとしています。おかしいですよね。

 これらは敗戦から這い上がるための復興のためであったわけです。海外からも敗戦の痛手を持った日本だからと許されてきました。

 本みりんだってきっとその一部でしょうね。

 もう戦後は完全に終わったと言われて数年が経過しています。変わらなきゃ!いつくかのCMで使われていた台詞。北野タケシもカローラの宣伝でそのようにしゃべっていましたね。なかなか変わらないですよ。変われないですよ。特に調味料は最後の方じゃあないでしょうか。

 梅酒以外の日本の伝統的な混成酒は忘れられかけています。

 調味料は料理の中で重要な役割をしています。料理に使う肉や魚や野菜などと比べると、かなり安いものだと思います。

 本みりんが1リットルで735円。
 純米本みりんが1リットルで1,260円

 並んでいたら、倍近い純米本みりんは相当高く感じます。

 本みりんとは何か?
 本物のみりんとは何か?

 これまでは存在すら知らないことと、安さによって、本物が使われなかったですが、これからはきっとみなさんによって変わってくるのではないかと思います。思いたいです。そのための講座でもあります。

 みりん風、本みりん、純米本みりんなどの商品はありますが、単純なみりんはありません。日本人の心が映し出されている気がします。

 みりんの造り方のおさらいです。

 餅米と米麹とアルコール(40゜)を仕込みます。この時の品温は30゜にします。それから15゜まで下げて40日〜60日間糖化させます。みりんとみりん粕に分けるように搾ります。こうしてみりんは出来上ります。

 

「白酒」

 みりんのルーツとお話しました。白酒はひな祭りに使われてきました。私がまだ小学生だった33年以上前までは、一般家庭でも買われていた、珍しくはないお酒でありました。それが今では全くというほどに買う方はいなくなりました。

 大手の蔵元に聞いても、販売量の低迷から、3年前から仕込みは1本だけにしたというお話でした。

 みりんは料理に使いますから、忘れられてしまうことはないですが、白酒は忘れ去れてしまう可能性大でしょう。

 白酒は日本酒(昔はしぼらずどぶろく状)に餅米と米麹を混ぜて、練って造られていました。蒸留技術が伝わり、焼酎ができますと、日本酒に代わって焼酎が使われるようになりました。いずれにしても、甘さを求めたお酒として愛飲されてきました。食べてきたの方が正解かもしれません。教室でもお飲みいただきましたが、ドロドロでしたものね。

 砂糖等はなかった時代、糖分が乏しかった人々の健康を維持してきました。

 白酒を搾ったのがみりんであります。澄んだ甘いお酒として流行ったことでしょう。江戸時代の料理人が澄んだみりんを料理に使うようになりました。飲用ではないものの、発展の一つです。みりんはその後は調味料としての地位を築き、今に至っております。

「柳蔭」

 みりんの兼価版として登場したのが柳蔭。みりんに焼酎を入れてアルコールを高め、酔いやすくしてあります。にごりもちょっと混ぜたりして、糖分とコクを与えています。安い酒を飲んでいるのを見られたら、男も台なし。柳の蔭で、ひっそり飲んでいたことから、この名前がついたという節があります。

 そして、濁っている部分が柳の枝だのように見えることからも付いたという節もあります。

 柳蔭の味わいを思い出していますか?

 江戸時代から変わらぬ味わいです。こういうのは変わらなくてもいいです。

 江戸時代の夏もとっても熱く、水や食べ物が雑菌で侵されますから、病気になる人が多かったようです。今では冬のインフルエンザにより集団で風邪を引きますが、当時は夏にも身体の調子を狂わされていました。

 米が秋にならなければ採れません。夏は食糧難の季節でもあります。農家でもなく、お金を持っていない人は病気になったり、飢えたりしてきました。

 これらの人々を救ってきたのが、甘酒です。酒粕から造られる甘酒は栄養価がとっても高く、庶民を救ってきたのです。近年になって、酒粕の有効性が認められ、酒よりも粕が売れる等の現象が出てきました。

 麹を水にとかして造る甘酒は蔵元にしか作れません。4月に萩錦さんにに訪問した時には、麹から造られる甘酒を提供してもらうようにお願いしてみます。

 今回お飲みいただきましたお酒は、無色透明、輝く黄金色、白く濁りありと様々でありました。

 今回のおつまみは岩城様のお手製です。おふくろの味ってありますが、まさに彼女の食にかける魂、皆様への思いやりを感じる逸品ぞろいでありました。食養の世界にいる岩城さんではありますが、ハートも味もありがたかったです。すべて純米本みりんを使ってもらいました。

 おつまみを御覧下さい。

おそば

芋がらの煮物
出し巻き卵

大豆たんぱく
柿の酒粕あえ
大根酢

白菜の漬け物

2月17日(火) 「しぼりたて」

 しぼりたて・・・いい言葉です。状態を表しています。しぼったばかり、できたて・・・新鮮で旬なイメージですね。日本は旬をありがたく大事にする習慣があります。しぼりたてに対するイメージもそこからつながっているのでしょう。

 このように8本ありました。飲み会としても多い量であります。講座の教材ですからねえ。実質はこの半分でいいのかもしれません。

 しぼりたてを飲んで、やっぱり旬なお酒は美味しい。しぼりたてはフレッシュフルーティーなお酒ですねえ。このような内容ではちょっぴり淋しいと思い、多様性も狙ったところであります。

 まず、お酒を口にする前に聞きました。

 「しぼりたてって何?」

 そのお答えとして一番多かったのが、「しぼったままのお酒」でありました。

 そして、次の質問です。

「そのしぼりたてのお酒はどんなイメージをお持ちですか?」と聞きました。

 このようなことであり、しかも好印象。

 つまり美味しいお酒との認識です。

 美味しそうなしぼりたて。ラベルにはしぼりたての他、初しぼリやあらばしりなどもありました。

 また、お酒を形容する言葉がたくさん書かれていました。そこのところよろしいでしょうか?次の言葉の意味は理解できていますか?

しぼりたて =
初しぼり  =
あらばしり =
中汲    =
山廃    =
きもと   =
原酒    =
袋吊    =
雫酒    =
無濾過   =
生酒    =
生貯蔵   =
生詰    =
火入れ   =

 教室ではお酒の入った勢いでも構いませんから、なるべく声を出して下さい。講師の私にではなくても、周りの誰かでもいいですから。

 8本のお酒を順にきき酒していきました。

1.三千櫻 純米袋吊無濾過生原酒
2.鶴齢 美山錦特別純米無濾過生原酒中汲
3.安倍川の恵み 本醸造しぼりたて生原酒
4.杉錦 きもと純米しぼりたて原酒
5.日本盛 吟醸しぼりたて
6.高砂 山廃純米生原酒あらばしり H17BY
7.高砂 山廃純米生原酒あらばしり H18BY
8.古酒 ?

 

 1.と2.は両方とも純米の生原酒であります。1.の三千櫻が気品の京風に対して、2.の鶴齢はインパクトのある今風、あるいは東京風であります。

 3.は本醸造の生原酒であり、1.2.と比べますとアルコールが高く、切れがよかったと思います。

 現在市場に溢れているのは2.3.のような感じのお酒であります。

 いわゆる売れ筋。

 酒販店も飲食店も特徴をつかみやすいので、売るのも難しくなく、名が通れば通るほど売りやすくなります。グループで銘柄を担いで、幻化することが、酒業界として日常茶飯事であります。

 商売も自由ですし、自己責任であります。しかし、日本酒を学ぶというスタンスでは、それだけでいいのでしょうか?

 存在感をアピールするのは少数ですから、小衆であり、黙っていておとなしいのが大衆です。大衆にこそ目を向けなければ、片手落ちとなることでしょう。

 このことはあなたの心の中にでもあることです。お酒は嗜好品ですから、あなたの嗜好にそって飲まれるわけです。常に自分の好みのお酒を追い掛けてしまう。自分の好み以外の方が、数が多いのではないでしょうか。= 大衆

 飲酒は嗜好でいいです。好きなお酒に自分のお金を払って飲むわけですから。お酒を学ぶ酒徒(しゅと)となっている時間は、ひとまわり大きな目を持ち、お酒と接してほしいと思います。そうすることで感性が上がり、お酒の美学が築かれ、お酒の心までもわかるようになるのではないでしょうか。

 逆に好き嫌いを持出しますと、きき酒すら出来ないわけであります。自分の好みでないお酒があったとき。これは私の好みではないから・・・で終わりにしてはいけません。自分は好みでなくても、それを好んで飲んでいる人々がいます。すべてのお酒に対して飲み手は存在します。

 どうしたら、このお酒って、美味しく飲めるのだろうかと入っていってほしいです。

 保存管理が悪くて劣化してしまったお酒。それに対しても劣化していると切り捨てるのではなく、かわいそうなお酒と目を向けたら、その次の行動が違ってくることでしょう。

 常に学ぶ気持ちを忘れないようにして下さい。学ぶということは、知識を得ることだけではありません。ここら辺もよく勘違いされてしまうことです。

 知識は振りまいても自己満足。知識も有効に活用してこそ、みんなのためになります。知識はあなたの成長を阻害したりします。ある程度の知識は必要ですが、追い掛ける目的物ではありません。

 復習レターとしては辛口になりました。新しい方もいますから、胆の部分として書いたところであります。

 

 4.の杉錦はしぼりたてですが、一度火入れをしてあります。

 それじゃあ、しぼりたてではないじゃん!そんな声も聞こえきそうであります。静岡県内の中には、生酒は出さない蔵があります。杉錦もその一つです。

 日本酒は開放醗酵のため、醗酵タンクは密閉されていません。炭酸ガスが上に逃げていこともありますし、醗酵タンク内のもろみを撹拌することもあります。しぼっただけの状態では、雑菌が入っている恐れがあり、製品になった後から、この雑菌が働きだし、酒質を落とすことも考えられます。

 もう1点、生のままですと酵素も活性しているので、熟成の進み具合が早いです。

 一度火入れして、それから時間があまり経っていなければ、まだしぼりたての風味が残っています。新酒らしさの風味をきき酒用語で「新酒ばな」と呼びます。

 火入れして安定させた新酒として出すことが、火入れのしぼりたてを出す蔵元の目的であります。

 

 5.の日本盛は地酒蔵と違って、年間を通じて酒造しています。いつでもしぼりたてがあるわけです。限定とはならないわけですね。アルコールは13゜と低めですが、味わいはしっかりあります。私個人的には、普通の平均的なお酒らしさが持ち味で、飲み手を選ばないお酒だなあと思っています。お料理との相性研究には使いやすい教材の一つです。フレッシュさを備えた軽いタイプの平均的なお酒を演出しているようです。

 

 6.と7.の高砂は同銘柄の醸造年違いです。6.が2年古酒で7.が1年古酒となっています。これまでの1.〜5.までと比べてどうですか?

 また、6.と7.の間にある1年の意味はどんな感じであなたに訴えていますか?1年はいいが、2年は長いのか。どうせ熟成させるなら、2年よりもっともっと長い方に挑戦するべきなのか。

 ここで熟成という言葉が出て来ました。

 ワインの熟成は不思議ではありません。ヴィンテージ(年号)がついているワインが多いですもんね。日本酒は稀にしか見かけません。

 8.は古酒であります。熟成です。

 14年古酒です。私の押し入れの中に静かにずっと入っていました。熟成させたことも忘れてしまっていたのが事実です。父がなくなり、部屋を整理していて発見しました。これは講座で使おう。その機会がやってきたわけであります。

 お酒は開運のしぼりたて生酒です。酒の箱まで色が付き始めています。一切光の入らない場所に置いてありましたが、時間の経過はすごいものですね。

 お酒はこのように黄金色に輝いていました。

 12名中、このタイプがお好きなのは3名様でした。だいたい10名に1名が好きになってくれてます。

 椎茸、昆布、ナッツ、ドライフルーツ、八角を混ぜた匂いがしてます。このタイプは肉類、油分の多い料理、醤油が煮詰まった料理にあいます。意外にもフレッシュなイチゴにもあうのです。おつみに肉団子が入っていました。熟成酒とあわせてもらうためでありました。

 お皿は青竹を使ってくれました。お気付きでしたか?

 ここでお酒の保存管理について疑問をお持ちの方もいることでしょう。8.の古酒は元々はしぼりたての生酒でした。 生酒は冷蔵庫に入れて保存管理しなければ、火落ちする可能性が相当高い。

 火落ちは空気中に存在する乳酸菌の一つであり、醗酵中に入り込む可能性もあり、詰める瓶に付いていることもあります。アルコールが好きで、乳酸性下の日本酒の中でも生きていられます。低温下ですと、活動しませんから、お酒への影響はほとんどないですが、常温の15゜以上くらいになりますと活動してきます。日本酒の栄養分やアルコールを代謝し、お酒が濁ってきます。瓶の底には温床となったようにべったりと白く大きくなってきます。

 なのになぜ生酒を常温熟成させたのか?

 火落ち菌はアルコールが好きですが、限度があります。20゜くらいアルコール分がありますと、活動はしづらいようです。8.の古酒のアルコール度は19゜〜20゜。活動のギリギリのところです。

 それから、光の当たらないように、新聞紙に巻き、押し入れに入れっぱなし。火落ちしていたのかもしれません。火落ちは常温熟成した場合には、1年目に現れます。14年間の間にすでに火落ちし、その影響すらわからなくなってしまっているのかもしれません。長期の熟成はリスクもありますが、遊び心を持ち、見守ってあげることも大事であります。

 生酒として熟成させるのであれば、このようなアルコール度が高いお酒。それは原酒です。原酒は生酒も火入れしてあるのもあります。しぼりたての時期が手に入れやすいですから、自家熟成させるのであれば、今からがチャンスです。未来の楽しみとして自家熟成もやってみて下さい。お酒と一緒に手紙も書いて、タイムカプセル酒として隠すのもよろしいでしょう。しぼりたてから熟成へと話しが流れてしまいました。

3月17日(火)  「静岡のお酒」

 地元である静岡県のお酒についての勉強でした。あなたの持っている静岡酒のイメージはどうでしょう。静岡県は米所でもなければ、雪の積もる寒冷地ではありません。昔はお酒が雪国がお似合いでした。製造数量の多いところは、灘・伏見、新潟、福島、秋田、愛知などであります。

「静岡の土地柄」

 静岡のお酒はどうか?お酒は風土に根付いていることから、静岡のお酒を飲む前に、静岡の土地柄についてお聞きしました。

「地理」
 新幹線の駅の数、東名高速道路のインターの数、東海道五十三次の数、これらを見ましても、東西に長くて、東京や名古屋といった、大量消費地圏に近いことがわかります。北部は富士山や南アルプスが占めていますから、山ばかりの自然が豊かな場所です。南部は大平洋に面しています。山の幸にも海の幸にも恵まれいます。

「気候」

 温暖な住みやすい場所。ところが、酒造りには低温が適しています。そこで、冬を自分達で作ってしまいました。冷蔵設備の充実であります。他県に先駆けて設備投資してきました。

 人柄は温暖な気候がそうさせたのでしょうか。おだやかです。おだやかさは協調性はある一方で個性的さには欠けています。

 みんなで何かしようとなりますと、反対者は少なく、その方向に向かいやすいとなります。吟醸酒に力を入れていこうとの合い言葉が、どこの蔵にも浸透しています。

 全体的にはいいが、特別いいものはない。そんな印象かもしれませんね。

「歴史」
 酒造りは醸造であり、味噌や醤油といっしょです。静岡県下においても、味噌・醤油を含めた醸造課が工業試験場でき、その中にお酒専門の酒造工場を作りました。

 日本酒の消費量が下り始め、ビールに抜かれたのが昭和53年のことです。当時の静岡の蔵元のほとんどは、灘・伏見の大手の下請けが多く、静岡で造ったお酒を灘・伏見に送っていました。この行為を「桶売り」と言い、そのお酒を「未納税酒」と言います。

 清酒の消費量が減るために、桶売りも減らされ全体的にピンチがやってきました。

 そこから何とかしようという気風が芽生えました。この何とかしようの気持ちこそ、いまある静岡酒にとって、一番大事なものだったと自負する蔵元さんも多いです。

 吟醸酒への挑戦です。

 昭和の50年代前半までは、コンテスト用に吟醸酒を造っていた蔵元もありましたが、あくまでそのお酒はコンテスト用で市販てず、他のお酒に混ぜてしまっていました。コンテスト用に造っていた大吟醸を大吟醸として売る。今でこそ大吟醸はありふれていますが、当時は級別制度があり、一番上のクラスである特級が今の本醸造であった蔵元が多かったです。大吟醸は特級扱いで売らねばなりません。酒税だけで400円くらいはしていたと思います。2級酒が1.8Lで1,200円くらいでしたから、税金だけでも相当でありました。

 ところがこの級別制度も平成4年に廃止されます。そして、吟醸酒ブームとバブルがやってきました。静岡の吟醸酒も他県同様に売れるようになりました。

 その先の吟醸酒はどうなっていったのか。それについては、4月の講座でお話します。4月のテーマは吟醸酒でありますから。

「酵母」
 静岡酵母もよく聞く言葉です。県単位では広島県に続いて酵母開発をしてきました。そもそも酵母は蔵元のお酒の中にいるものです。醗酵中のもろみから採取し、育成・固定化して配付されます。最初の静岡酵母のHD-1は開運から採取されました。開運のもろみの中に素晴らしい香りを放つのがあり、それを試験場に持ち帰り、培養したのがきっかけです。このお酒は能登から持って来た酵母から造られていました。協会9号が変異していたものと思われます。

 昭和後期に静岡のお酒が全国の鑑評会で目に付くようになり、たくさん受賞もいたしました。この頃他県の蔵元さんらは、私にもよく言ったものです。「静岡のお酒だけ華やかなんだよな。他はフルーティーなんだけど。」HD-1は同じ9号系でも、一味違っているわけです。

 そして造り方にも違いを出しました。麹・搾り・濾過 です。

 

「米」
 原料であるお米は食べるものとは違っています。酒造りに適したものを酒造好適米と呼びます。

 静岡県も酒造元、農協、県と協力しあってきました。
 まず、若水でいこうとなりました。

 農家は誠意を持って作りましたが、杜氏さんらが首を立てには振らず、ここで酒造側と農家側が衝突しました。

 その後は県が音頭を取り、五百万石にも力を入れましたが、他県の五百万石と比べた場合、割れが多く、割高となり、これも中途半端になってしまいました。

 ならば西海ではどうか。工業試験場の推薦もありましたが、賛同したのは少数であり、事実上消滅。

 そこで次なる手として県は山田錦に似たオリジナルを作ろうとし、山田錦にγ線を当てて、突然変異させ、10,000粒以上の中から優良な粒を得て、新種の品種を作ることに成功しました。それが静系88号。富士誉→誉富士なわけです。

 誉富士については来期に楽しみ方か極め方のどちらかで詳しくやります。静岡県庁の元こめ室長にお願いし、どなたかゲストに来ていただけないかと、企画進行中です。

「静岡酒飲み比べ」

 ずらりと15本ならべました。ブラインドで提供するのは珍しいことです。名前で飲むと先入観が入ってしまいます。今回は東部、中部、西部の特徴を探ってもらいたかったので、そのようにしてみました。

 あなた好みのお酒はありましたか?それはどこの地域でしたか?

 行政上の分け方とは違っているかもしれません。大井川と富士川で分けてみました。大井川から西が西部。富士川から東が東部。大井川と富士川の間が中部。

 これらの地域から本醸造と純米酒は300mlを2本、純米吟醸は720mlを1本選んでお持ちしました。

 純米吟醸だけは銘柄のわかるようにしました。すべてブライントだと味気ない可能性もあるのではないかと心配したからです。アとか8番とかよりも、名前で呼ぶ方が美味しいことは事実です。

 結果です。

 この結果は蔵元さんには伝えにくいですよ。ですから、内緒にしておきましょうか。中部が人気があるのは、みなさんのお住まいが中部が多いからではないでしょうか。

 日本酒の85%くらいは水です。水が嗜好に影響してくるのは、理解できるところです。この場合の嗜好は馴染みからくる習慣の上に成り立っています。あなたに近いお酒が静岡酒であるわけです。お酒は風土を感じると言われますが、我々一人一人も風土そのものです。

 日本酒を愛する。静岡酒を愛して守っていく。こういうことを大いにしてほしいと願っております。

 今期はおつまみにも恵まれました。薬膳料理のいわとさんの提供でした。いわとさん御自身にも勉強になったようです。

 おつまみの工夫も日々お続け下さい。

 半年間の御受講ありがとうございました。

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